「チーム倉敷」がサッカー中継で意識していること

平日開催のラ・リーガ第5節はこちらのカードの解説を担当します。

バルセロナ vs. エイバル(スポナビライブ)
 
エイバルの乾は昨季カンプ・ノウでの最終節で、バルサ相手に2ゴールを決めています。しかし、最終的にはバルサが0-2から4発を決めて逆転勝利(4-2)をしています。
 
これは実況の倉敷保雄さんといつも話していることです。
 
日本人選手個人の活躍、パフォーマンスには日本サッカー界として当然注目すべきなのですが、サッカーのような団体競技では「チームの中での個人」があり、サッカーの個人パフォーマンスは監督の狙い(戦略&戦術)を理解しなければ正しい評価ができません。
 
日本のスポーツメディアはどうしても「チーム」というスキームや評価軸たる戦術を抜きに「個人」だけを取り上げる傾向があるので、最終的にその競技が持つ魅力が伝わり難いし、ラ・リーガを例えにすると「スペインサッカー」の価値が本当の意味で日本に浸透していかないのではないか、という話しを昨季から担当しているスポナビライブでのラ・リーガ中継で定期的に倉敷さんたちとしています。
 
少なくとも、スポナビライブで「チーム倉敷」として倉敷さんと一緒にやっている中山淳さんや私は「エイバルの中での乾」、「(ヘタフェ)ホセ・ボルダラス監督の戦術の中での柴崎」を理解しようと準備をし、試合中継に臨んでいます。
 
ということで、前置きが長くなりましたが昨季最終節でバルサ相手に2点リードを奪ったもののあっさり裏返されたエイバル、メンディリバル監督が今晩の試合で持ち味のハイプレスをどう発揮し、その耐久性を出すためにどうマネージメントしてくるのかが個人的には一番の注目ポイントです。
 
ユーベ相手にあっさり大勝したバルサが前節のラ・リーガでは昇格組のヘタフェに先制をされ、苦しめられたことが象徴するように毎節二強を相手に勇敢かつ緻密に戦うチーム揃いであることがラ・リーガの魅力ですよね。
 
そうしたことが伝わるよう、今日もしっかりとした準備をして中継に臨みたいと思います。

本物の指導者、中西哲生さん

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昨晩は久しぶりに中西哲生さんと作戦会議。
 
サッカー以外のセクションからの論理の取り込みでまたトレーニング・メソッドが進化していました。
 
何度でも言いますけど、哲生さんのパーソナル・トレーニングは選手からの要請がなければ実現しないものであり、にも関わらず哲生さんがグラウンド代やTR後の食事の席も含めて全て自腹。
 
トレーニングを施せば施すほど大切な時間とお金、エネルギーを失うことになりますが、「日本サッカーのため」という純粋なパッションと「選手(人)のため」になる確かなメソッドを併せ持つ稀有な指導者として粛々と選手と向き合ってくれています。

指導する選手が選手だけに、トレーニングは基本クローズなのですが、昨日の作戦会議で最も驚いたのはJFAの特任理事を務め、理事会に参加していた時に他の理事たちから何度も「どういうトレーニングをやっているの?」と質問されたそうですが、誰一人として実際に見学に来たことがないという事実…。

一度でも哲生さんの選手向けパーソナル・トレーニングを見学すれば「本物の指導者かどうか」の見分けは素人でも可能だと私は思っていますが、指導者養成事業で散々「オープンマインド」を謳う人たちが本当の意味でそれを持っているとは到底思えないのです。

勝手な憶測ですが、もし数年後に哲生さんが今指導している選手が欧州ビッグクラブへと旅立ち、確かな論理に裏打ちされた技術と身体操作術、その背後にある指導メソッドを欧州トップレベルのサッカー関係者が目の当たりにした時には、彼らは必ずや「中西哲生という指導者はどういうトレーニングをしているんだ?」とこぞって見学(勉強)に来ることでしょう。

むしろ、哲生さんという指導者が“世界”に引き抜かれる可能性さえあると思います。

指導者ライセンスを持っているかどうかはもちろん重要ですし、どういう選手やチームを指導してきたかはもちろん大切なのですが、過去の実績や肩書などを取り払ってフラットな姿勢で「本物の指導者かどうか」を見極めようとする人間が特にJFAやJクラブの上層部に増えてこないと日本サッカーはますます欧州、世界のサッカーに遅れを取ることになるでしょう。

掲載記事の補足キャプション

9月4日、フットボールチャンネルに下記の記事を寄稿致しました。

乾貴士、突出した守備戦術レベル。「順当」な先発起用。複数の相手捕まえる立ち位置(フットボールチャンネル)

記事だけでは現象がわかりにくいと思いますので、映像のキャプションをいくつか貼り付けておきます。記事の補足として参照下さい。

10分のシーン1
10分_1

例えば10分のシーンを見ていこう。浅野を背負っていたオーストラリアの左CB(スピラノビッチ)がGKライアンへとバックパスを入れ、GKがエリア外でボールコントロールをした局面だ。そこでGKは素早く右ボランチのアーバインの足元へとパスを付けた。

オーストラリアがビルドアップの局面でボールを日本から見て右から左へと循環させたシーンだが、乾は同数でのハイプレスをかけられない時には基本的にミリガン、アーバイン、レッキーという3選手で形成されるトライアングルの中心に立っていた。



10分のシーン2
10分_2

エイバルのみならず今の欧州で採用されている戦術からすれば、アーバインがノープレッシャーで前を向いた「オープンな状況」ではマークの受け渡しは行わず自身の担当ゾーン(エリア)を離れることになってもマンマーク対応することが主流となっている。

しかし、この局面ではロギッチについていた昌子、レッキーについていた長友佑都がラインを下げて足元で受けようとする自身のマーカーを簡単にリリースしているため、アーバインからパスを受けたレッキーに対して致し方なく乾はプレスに行っている。

乾からすればビルドアップ(相手のパス)を誘導して狙い通りにサイドにボールを追いこんでいる状況である以上、長友にはレッキーにそのままついて行ってもらい、長友にボール奪取をしてもらいたかったはず。



17分のシーン
17分

続いては、17分のオーストラリアのゴールキックからのビルドアップでの乾のポジショニングだ。GKから中央のCB(セインズベリー)にショートパスが出て、そこから左CB(スピラノビッチ)に入り再びGKが足元で受けたシーンとなる。

ここで乾はアーバインとミリガンの二人をつかまえる中間ポジションを取っているが、GKが右方向にコントロールをした瞬間にポジションをボランチ(アーバイン)方向に寄せてボランチへのパスコースを塞ぎ、右CBミリガンへのパスを誘導している。結果としてGKはミリガンの足元へパスを付けたとしてもプレッシャーがかかると判断して前方に大きく蹴り出したが、昌子が難なく頭で井手口に入れ日本ボールとなっている。



19分のシーン
19分

3つ目のシーンは19分、オーストラリアの左から右へのサイドチェンジ。左のボランチ(ルオンゴ)から右のタッチライン沿いに張るレッキーにサイドチェンジが起こった場面で日本の選手に求められる守備の戦術アクションは「スライド」となるが、乾は長友と同等のスピードでレッキーに寄せて2対1の状況を作ろうとしている。

しかも乾はスプリントをかけながら自身の後方に入ったシャドー(ロギッチ)のポジションを確認している。エイバルで普段戦うラ・リーガ1部のレベルであれば、レッキーからワンタッチでロギッチに斜めのパスが出ていてもおかしくない。

実際、昌子、長谷部のスライド対応はスプリントではなくジョグであったため明らかに遅れていたが、乾はもしロギッチがレッキーからワンタッチで受けるために斜めにスプリントをかけていればそのコースを消しながらボールホルダーにアプローチをかけていたはずだ。



長友と同ラインまで下がる原口
長友と同ラインまで下がる原口

右CBに突っ込み簡単にはがされる井手口
右CBに突っ込み簡単にはがされる井手口

逆に交代で入った原口は、確かに82分の井手口の追加点のきっかけとなる高い位置でのボール奪取という目に見える守備での結果を出しはしたが、レッキーを警戒するあまり長友と同ラインか時に長友よりも低い位置まで下がるなど疑問符の付く守備対応が散見された。

その守備対応はハリルホジッチ監督の指示だったのかもしれないが、完全にノープレッシャーとなったミリガンに対して井手口が無理やり突っ込んでいき簡単にはがされるシーンがあるなど、もしオーストラリアが試合終盤に単純なロングボール、クロスの放り込みを徹底してくれば日本の左サイド、原口の守備対応が穴となっていた危険性もある。

スペインの育成指導者の底力

昨日(7月24日)は、バレンシア在住時代から何度も取材をさせてもらっている(=それだけ指導者としてリスペクトしている)オスカル・ディアス氏にインタビュー取材をしてきました。

Oscar Diaz

現在、CDAサン・マルセリーノという街クラブのユースAで監督を務めているオスカルは、これまでのキャリアにおいてバレンシアCF、レバンテUDといった地元プロクラブのカンテラ(下部組織)での指導経験もあります。

所属リーグのカテゴリーはユース3部ですが、昨季はリーグ優勝を果たすなど毎年率いるチームを優勝争いまで持っていく実力は折り紙つき。今夏もラ・リーガ1部クラブのカンテラやセミプロのトップチーム監督のオファーをひっきりなしに受けている彼ですが、「きちんとしたプロジェクトとオーガナイズのあるクラブで育成年代の選手を指導したい。自分はプロ、大人よりも育成の指導者だと認識している」と来季も同クラブのユースA監督を継続することを決めています。

19歳から指導者として活躍しているため「育成のスペシャリスト」としてもう23年。

プレシーズンの始動は7月末ですが、オフ中だからこその「指導者としての研鑽」も欠かしません。

今夏、5冊もの指導書を新たに読み漁り、地元大学の非常勤講師を務めたことで知り合ったハンドボールの指導者から、ハンドボールの最新戦術のレクチャーを受けているとのことでした。

インタビュー前には、「この前のU-21欧州選手権のマケドニアの守備戦術を見た?あれは斬新だったから見た方がいいよ。ゾーンを基本としながら常に2、3人をボール近くに寄せる変則ゾーンディフェンスだった。面白かったからプレシーズンでうちのチームにも落とし込める部分を落とし込むつもりだよ」といった雑談をしてくれました。

こうした指導者がサッカー大国スペインの底辺を支えているのです。それと同時に、改めてスペインの育成年代の指導者の底力を見た気もします。

バレンシアの名店(日本食)「Kamon」

久々にスペインのバレンシアにやってきて、まず食べに行ったのが昼も夜も「予約なしでは入れない」ほど流行っている日本食の名店「Kamon」。

オーナーでチーフシェフのHiroとはバレンシア在住時代からの親友で、在住時代には本当に世話になりました。

独立オープンのプロセスから知っているだけに、期間を置いて食べに行く旅に料理のクオリティはもちろんのこと、メニューのバリエーションやホスピタリティ・サービスの向上には目を見張るものがあります。

味と値段のコスパから言えば、「日本ではなかなか出会えない店」ですので、バレンシアに行かれた際には是非食べに行ってみて下さい。

今回は3年振りに子連れで来ているので、長男を連れてパシャリ。
Kamon Hiro


プロフィール

Ichiro Ozawa

Author:Ichiro Ozawa
1977年9月、京都府生まれ。
サッカージャーナリスト。
早稲田大学教育学部卒業後、
社会人経験を経て渡西。
バレンシアで5年間活動し、2010年に帰国。日本とスペインで育成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。多数の媒体に執筆する傍ら、サッカー関連のイベントやラジオ、テレビ番組への出演やラ・リーガ、UEFAチャンピオンズリーグなどの試合解説もこなす。(株)アレナトーレ所属。

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